ベルギーのクラブを語るとき、成績や選手の名前より先に出てくるのが「色」だと感じることがある。青と黒、あるいはロイヤルブルーと白。その色は、たいてい街の歴史そのものと結びついている。
今回は、ベルギー1部の中でも特に個性が際立つ3つの街——ブルージュ、アントワープ、ヘント——のクラブを、街の成り立ちとあわせて紹介する。
ブルージュ——「青黒」が似合う、時が止まった街
ブルージュは、中世の街並みがそのまま残る運河の街として知られている。観光地としての静かな佇まいからは想像しにくいが、このブルージュを本拠地とするクラブ・ブルージュ(Club Brugge KV)は、ベルギー国内リーグ優勝20回を誇る、アンデルレヒトに次ぐ歴代2位の強豪だ。
1891年創設。トレードマークは青と黒のストライプ。「Blauw-Zwart(ブラウズワート/青黒)」という愛称でそのまま呼ばれることも多い。中世都市の落ち着いた佇まいと、国内屈指の強豪クラブという顔——一見結びつかなそうなこの2つが同居しているのが、ブルージュという街の面白さだと思う。
アントワープ——港町が生んだ「THE GREAT OLD」
アントワープは、ヨーロッパ有数の港湾都市だ。物流と商業で栄えてきた街の気質は、ロイヤル・アントワープFC(Royal Antwerp FC)というクラブ名にもよく表れている。
創設は1880年。ベルギーに現存する最古のクラブで、地元に住んでいたイギリス人学生たちが始めた運動クラブがルーツだ。当初はテニスやクリケット、ラグビーまで含む総合スポーツクラブで、1887年にサッカー部門が独立した。その歴史の長さから、クラブは「THE GREAT OLD(偉大なる老舗)」という愛称で呼ばれている。
港町らしい労働者階級のエネルギーと、「最古参」としての誇り。この組み合わせが、アントワープというクラブの持つ独特の重みを作っている。
ヘント——「バッファローズ」と、フランドルの意地
ヘントは、ブルージュと並ぶフランドル地方の歴史都市でありながら、性格はかなり違う。KAAヘント(KAA Gent)の愛称は「バッファローズ」。20世紀初頭、アメリカの興行師バッファロー・ビルの西部劇サーカスがヘントを訪れたことに由来すると言われている。
ヘントとブルージュの対戦は「フランドルの戦い(Battle of Flanders)」と呼ばれる、ベルギー国内でも屈指の因縁を持つカードだ。両クラブとも同じフランドル地方の文化的中心地でありながら、西フランドルからヘントへの人口移動によってヘント市内にもブルージュ・サポーターが少なくないという事情もあり、KAAヘントは「地元の誇り」を強く前面に押し出すクラブとして知られている。
色を知ると、試合の見え方が変わる
ユニフォームの色や愛称は、単なるデザインではない。その街がどう生きてきたか、何を誇りにしてきたかが、色という一番シンプルな形に圧縮されているのだと思う。
次にベルギーの試合を見るとき、スコアだけでなく、その青黒や、その街の名前の重みにも、少しだけ目を向けてもらえたら嬉しい。