ベルギー2部、チャレンジャー・プロリーグの順位表を眺めていると、手が止まる名前に出会います。「Club NXT」「RSCA Futures」「Jong Genk」。これはクラブ・ブルッヘ、アンデルレヒト、ヘンクという1部の強豪が、2部に送り込んでいる若手チームです。ビッグクラブの「2軍」が、本物のクラブと同じ順位表で勝ち点を争っている。少し不思議な光景ではないでしょうか。
いつから、誰がいるのか
本格的に始まったのは2022-23シーズンのようです。それまで別枠だったU23リーグの上位4チーム——ブルッヘのClub NXT、アンデルレヒトのRSCA Futures、ヘンクのJong Genk、スタンダール・リエージュのSL16 FC——が2部に組み込まれました。その後SL16 FCは2023-24を最後に降格して現在は3部にいるようで、代わって2025-26からゲントのJong KAA Gentが加わり、2026-27の2部にはこの4チームが在籍しています。
「2軍」に課されているルール
もちろん何でもありではありません。U23チームは1部に昇格できず、常に親クラブより下の階層で戦い、降格はあり得る。選手も、導入時の条件ではフィールドプレーヤーは23歳以下、GKは25歳以下、年齢制限外は1人だけで、トップチームの直前の試合に先発した選手や45分以上出た選手は次のU23戦に出られません。だから「1軍の主力が降りてきて2部を荒らす」ことは起きにくく、18歳から23歳の選手に「本気の公式戦」を毎週用意する、という狙いが見える設計だと思います。
揺れ続けたルール、そして2026年の決着
ただ、運用は安定していません。2025年2月、プロリーグは「2部には常に最低4つのU23チームを置き、U23は降格しない」と決めました。そうすると、U23が降格圏でも、代わりに順位が上の普通のクラブが落ちることになる。実際、2024-25に降格圏で終えたJong Genkは、この枠を満たすため17番目のチームとして残されました。
当然、2部の他クラブは反発します。訴えを受けたベルギー競争当局は2026年3月にこの規定を問題視し、5月には適用を停止。降格圏だったClub NXTは一時降格扱いになりました(最終的には別クラブのライセンス不交付で、結果として残ったようです)。そして2026年6月、プロリーグは保護枠を廃止し、2026-27からはU23も他クラブと同じ昇降格ルールに従うと報じられています。「育成の特別枠」と「勝ち点で決まる公平さ」のあいだで、ベルギーは今も揺れているのだと思います。
Jリーグにも、似た試みはありました
実は日本にも同じ発想の時期がありました。2016年から、FC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪のU-23チームがJ3に参戦したのです。Jリーグの発表によれば、目的は「18歳から23歳の選手の試合出場機会を創出する」こと。ベルギーとほとんど同じ言葉です。
けれども、この試みは2020年シーズンで終わりました。地域リーグやJFLを勝ち上がったわけではないU-23チームが、J3の限られた枠を占めることへの問題意識があったようです。その後は2021年と2022年のJエリートリーグを経て、2026-27から新設の「U-21 Jリーグ」が始まっています。同じ悩みに対して、日本は「ピラミッドの外に育成リーグを置く」答えを、ベルギーは「ピラミッドの中に2軍を組み込む」答えを選んだ。そう整理できるのではないでしょうか。
同じ問い、ふたつの答え
「ユースを出た後、トップに定着するまでの数年間を、どこで戦わせるか」。この問いに、正解はひとつではないのだと思います。ベルギーのやり方は若手に厳しい実戦を与える一方で、2部の街クラブには「ビッグクラブの若手が、うちの昇降格に影響してくる」不公平感を生みます。日本のやり方は公平ですが、育成リーグが「本気の場」になり切れるかは、これから見えてくる話でしょう。
だから私は、順位表の「NXT」や「Futures」という名前を、ベルギーが育成に対して選んだひとつの覚悟として眺めています。そこで揉まれた若手が数年後に1部のピッチで名前を見せてくれるのなら、この少し不思議な順位表も、追いかける価値があるのではないかと感じています。